伊勢志摩国立公園

伊勢志摩国立公園はリアス式海岸と温暖な気候による植生が特徴である。三重県中央部の志摩半島一帯を区域とし、およそ東西50km、南北40kmという広大なエリアにわたる。約2000年の悠久の歴史をもつ聖域伊勢神宮だけでなく、海岸部にも多数の観光地が点在する。「うまし国」伊勢は、海と密接に結びついた民族文化や歴史が今も息づいており、自然の造形美に人々が育んできた生活が融合した独特の魅力があふれている。

鳥羽市

鳥羽市は、伊勢志摩エリアの海の玄関として栄えてきた町だ。その歴史は古く、神話の時代にまで遡る。倭姫命が鳥羽を巡幸されたとき、鳥羽の海女がとっている鮑をいたく気にいられた。それ以来鳥羽は、伊勢神宮の神饌(しんせん)を奉納する「御食国(みけつくに)」としての役割を今も担っている。戦国時代には九鬼嘉隆率いる九鬼水軍の輝かしい武功を重ね、その名は全国にも知れ渡った。明治時代には、本幸吉が世界で初めて真円真珠の養殖に成功した。そして現在、そういった海に暮らす海人(かいじん)たちの生活の営みが、豊かな自然環境とともに訪れる人々を魅了している。

鳥羽マリンターミナル

鳥羽駅から海に向かって歩くと鳥羽マリンターミナル(佐田港)がある。ここから市営定期船が出航しており、離島とを結ぶハブ的施設となっている(Free Wifi利用可能)。

定期船

答志島

鳥羽市内には有人の離島が4つある。その中でも、特に独特の民俗文化・歴史があるのが答志島である。答志島は、鳥羽港の北東約2.5kmに位置する、東西約6キロメートル、南北約1.5キロメートル。この島の北側には、木曽三川、宮川など多数の山水が流れ込み、さらに南側には熊野灘の黒潮が押し寄せることで、豊富な漁場が形成されている。答志島に渡るための市営定期船は、主に離島の人々により生活のために利用されており、通勤・通学の人々、そして物資を運搬する人々がほとんどだ。船には多数の生活物資が載せられており、島言葉が飛び交う。本土から少し離れただけで、まったく別の世界に来たような気分になれる。

定期船 定期船

和具港

定期船の和具港に着くと、そこはまさに「海人」たちの生活がただよっている。この海域では、一本釣りとえび曳きが盛んで、漁のための船が多数。港には、漁業に携わる人たちの活気で満ちている。

答志島和具港 答志島和具港
寿司処まるみつ

答志島での食事処 寿司 まるみつ

和具港から徒歩3分ほどの場所にある寿司処「まるみつ」は、新鮮な海鮮を提供している人気の店だ。新鮮な魚貝類を使った「海鮮丼」と握り寿司が特に人気である。

寿司処まるみつ 寿司処まるみつ

和具港から首塚へ

和具港の沿岸を少し歩き、首塚に向かう一本道に入ると、「世古(せこ)」と呼ばれる狭い道になり、風景は一変する。答志島には、このような迷路のような世古が多数あり、漁師町ならではの雰囲気であふれている。この島には、戦国時代、水軍の将として活躍した九鬼嘉隆が眠っている。九鬼嘉隆は、織田信長の時代に鉄板装甲船を建造して仕えたことから鳥羽城城主となり、さらに豊臣秀吉の下では、水軍大将として名をはせた。しかし関ヶ原の戦いで西軍に味方し敗退。実子である九鬼守隆は東軍であった。血の繋がる親子をも分ける天下分け目の戦いであった。嘉隆は59歳で自決。その後、遺書にしたがい、この答志島に葬られたという。

首塚までの道
首塚までの道 首塚までの道

首塚

首塚からの景観は、息をのむほどに素晴らしい。紺碧の海が一望できる。戦国の世に生きた嘉隆がこの地を永眠の場所として選んだわけがわかるような気持ちになる。

首塚 首塚 首塚 首塚

美多羅志(みたらし)神社

和具漁港から答志漁港までは、約20分の上り坂となる。その道中で左側に位置するのがパワースポットとしての評判がある美多羅志神社(通称「龍神さん」)である。「多羅志」とは、古代の海人族「タラシ」に由来すると言われ、この場所は古代より海人たちの信仰の場所となっている。『日本書紀』によると、神功皇后の新羅出征(4世紀頃)の折に、答志島の海の神からのお告げがあり、島の海人族が出征の支援をしたという。

美多羅志神社
美多羅志神社 美多羅志神社
答志漁港までの世古

答志漁港までの世古。

浜与

答志魚港

答志魚港に面した海岸通りでは、浜与など地元特産品のしらすを扱う店が数軒ある。海の栄養を豊富に含んだ食品として人気がある。

答志漁港 答志漁港
海女小屋

海女小屋

答志島では、今も現役の海女が活動している。その海女たちが漁の合間に暖をとるのが「海女小屋」だ。

海女小屋 海女小屋
海女小屋

海女小屋体験

海女小屋では、観光客のために海女小屋体験を提供している。地元の海女たちが目の前で魚貝類を炭火で焼いてくれる。島の暮らしや海女漁の話を聞きながら食べる新鮮な海の幸は、また格別である。海女小屋体験は4000円。ほかに、島の「かあちゃん」たちの案内による路地裏散策(料金:1500円)も提供している。(海女小屋体験の写真提供:島の旅社)

海女小屋 海女小屋
ミキモト

ミキモト真珠島

鳥羽の近代の偉人と言えば、真珠王の異名を持つ御木本幸吉である。ミキモト真珠島は、明治26(1893)年に初めて真珠の養殖に成功した場所である。この島では、海女の実演、真珠博物館、ショッピング、食事、散策など、ゆっくりと過ごせる施設が多数備えられている。真珠養殖の歴史、海女たちが果たした役割などを深く知ることができる(ムスリム対応:礼拝室とキブラの提供あり)。
個人入場料金(消費税含む):大人1,500円、小人(小・中学生) 750円
営業時間ならびに海女の実演時間は季節により変動

海女の実演

昔ながらの磯着を身につけた海女たちが目の前で実演をみせてくれる。海女の磯笛を実際に聞くことができるのは貴重な体験となるだろう。

海女の実演 海女の実演

真珠博物館

真珠の養殖工程は一般的にはあまり知られていない。ここでは、真珠ができるまでのメカニズムを多数の標本やパネルで解説している。天然真珠の時代から養殖真珠の時代への変遷は興味深いものがある。御木本幸吉の養殖技術が、豊かな自然と共に今も伊勢志摩の海で息づいていることを知ることができる。

真珠博物館 真珠博物館
パールプラザ

ミキモトでの買い物・食事

島内にあるパールプラザは、1Fがパールショップ、2Fがレストラン「阿波幸」となっている。パールショップでは、ミキモト真珠島限定のオリジナルジュエリーの他、多彩な商品が販売されている。2Fの「阿波幸」では、鳥羽湾をながめながら名物「真珠うどん」を食すことができる。(写真:パールショップミキモト真珠島提供)

御木本幸吉記念館

御木本幸吉記念館

うどん屋「阿波幸」の長男として生まれた幸吉が真珠王になるまでの人生は、ひらめき、夢、努力に満ちている。伊勢志摩の海をこよなく愛し、真珠養殖に尽くした彼の人生、そして信条に関する様々な展示品や映像を公開している。日本の戦前戦後の歴史との関わりも知ることができ、興味深い内容となっている。

御木本幸吉記念館 御木本幸吉記念館

珠の宮

ミキモト真珠島には、知る人ぞ知るパワースポットがある。この島の守り神豊受気姫命(とようけひめのみこと)を祀る「珠の宮」である。創建は710年頃と伝えられる。信仰心の厚い幸吉は、毎日のようにここに参拝していたという。縁結びをはじめ、長寿、繁栄などのご利益があるとされている。境内には「願いの井戸」という古い井戸があり、アコヤ貝の貝殻に願いを書いて投げ入れ、沈んでゆく間に祈れば、その願いが叶うと言われている。

珠の宮 珠の宮 珠の宮願いの井戸 珠の宮願いの井戸

提案する行程と順路

近鉄名古屋駅→(近鉄特急約100分)→鳥羽駅→佐田浜港→(市営定期船 約15分)→和具港→首塚→(美多羅志(みたらし)神社→答志港→佐田浜港→ミキモト真珠島→鳥羽駅→名古屋

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